――収容施設内。
御門頼は、自分が過去に書いた日記を読み上げていた。
「六月二日、図書館で彼女と一緒に勉強をしたあと、
輪廻について話をした……」
しかし頼は、そのことを少しも思い出せない。
彼はこの数年、日を追うごとに、脳内から記憶が失くなっていく症状に
苦しみ続けているのだ。
このままではいずれ、なにもかも思い出せなくなってしまうのではないか……。
頼はその事に、酷く恐怖心を抱いている。
五年前、日本政府が行った実験「RUNLIMIT」の被験体となった頼。
実験失敗の代償として、その身体に致命的な欠陥を負ってしまった彼は、
夜になると、実験が与えた右脳・左脳への影響で理性を喪失し、
凶暴化する体質へと成り果ててしまったのだ。
19歳の彼に残されたタイムリミットは、あと僅か……。
そんな中、頼の元に新しい監察官が現れる。
それは、彼が幼少期から恋心を抱いていた、幼馴染の少女だった。
「……おかえり。ずっと待ってたよ」
頼はまるで、最初からこうなる事を知っていたかのような発言をするが……?
この再会によって、実験の裏に隠された悲しき愛の物語が、ふたたび動きはじめる――