Haruka Nakamura、Maika(baobab)、LUCA、田辺玄四重奏。
アルバム全作詞・作曲・プロデュース : haruka nakamura
うた、フィドル maika(baobab)
うた LUCA
ガットギター、アンビエントギター、声 田辺玄
ピアノ、アコースティックギター、ハルモニウム、声 haruka nakamura
録音・mixing & mastering 田辺玄(studio camel house)
録音補助 甲田徹
A&R 山口響子
衣装 evam eva
ブックレット写真、ビデオディレクション 川内倫子
--
evam evaとの往復書簡のような時間が始まってから十年が過ぎた。
始まりは2010年。
山梨gallery &trax&での展示演奏会。
それから毎年のように演奏を重ね、その軌跡はevam eva yamanashiのオープンを記念したコラボレーション・アルバム「ゆくさき」となった。
その後、僕は各地を旅して立ち寄る日本中のevam evaで、何度も「ゆくさき」の音が、店内に流れている空間を体験してきた。スタッフのほとんどは女性で、凛とした空間で粛々と日々の作業に向かう彼女たちの美しい姿は、どこか、修道院で農作業をし、日々の祈りを捧げる修道女たちの様に清く輝いて、慈しみさえ携え、僕の目には映った。
どこの店舗に行っても、いとけき笑顔で迎えてくれる温かな修道女たち。そして母であり、evam evaのマザーでもある尚子さん。
「ゆくさきの、その先の光景が見たい」
と、尚子さんが話してくれた時。
彼女たちに捧げる讃美歌を作ろうと思った。
働く女性への讃歌であり、母への感謝の歌を。
「ゆくさき」はgallery&形&の豊かな「響き」を大切に捉えた即興的インストアルバムだったが、今回は僕からevam evaへの、ありったけの「想い」を込めた。
幾つかの歌が生まれ、歌詞には心を言葉にして遺した。
天からの贈り物のようなLUCAとmaika、二人の歌が静かな祈りを捧げた。「ゆくさき」では録音担当だった田辺玄が今回はギターなどで共に奏で、共に歌った。
同じ時代にtraxで展示を続けていた写真家・川内倫子さんに録音風景などを撮影して頂いた写真がブックレットになっている。僕は、十年前から彼女の写真を部屋に飾っていた。
その時まだ僕らは出会ってはいなかったが、同じ街に住んでいた。川の流れる街に。
十年は長い月日だ。
たくさんの物語が、僕らの川を流れていく。
大切な人は旅立っていく。
夕暮れのあの一番星を見て、毎日のように想う。
そしてまた新たな命が生まれ。
春の歌が聴こえてくる。
僕たちは一人で歩いているわけではない。
共に川を流れ、そこでは音楽は常に歌っている。
このアルバムは冬から春へ巡る季節にevam eva yamanashiで録音されました。
十年越しの、僕からの感謝の手紙です。