「バッハ~」は、一見派手さはないものの、展開が豊かで、耳に小気味良く残る曲です。
そしてカップリング曲の「years」はこれまでのサカナクションの作品の中で最も儚くて、美しくて、力強い。
暗闇の中から湧き上がってくるような静かな高揚感に、耳が心が震えて止まない。
これはとんでもない名曲をねじこんできた。
カップリング曲にしたって、歌詞カード(手紙をイメージしたような封のされた別紙が挟み込まれている)にしたって、
いくらでも手を抜くことはできただろう。
CD-EXTRAとして収録されているドイツで撮影したLyric-motionだってそうだ。
むしろ現状のセールスと天秤にかければ、ここまで手の込んだことをするのはまったくもって割に合わない。
それでも、彼らは、リスナーのため、そして10年後、20年後にこのCDを手に取る未来の若者のために、一切の妥協を許さない。
音楽がファッションのようになってしまったこの時代に、一枚のシングルを生み出すまで、こんなにも苦悩するバンドがいる。
音楽を食べ、音楽と結婚して、音楽になりたいと言ってはばからないボーカルがいる。
もちろん、そんなバックグラウンドにさらさら興味がなくたって大丈夫です。
このシングルが傑作であることは、手にとっていただければ分かると思います。