「鏡の中のアクトレス」の成果を残して渡米。ニューヨークでの2年の充電期間を経て作られたアルバム。タイトルは彼女のニューヨークの住所から。 アレンジャーは中村哲。彼との二人三脚のような作品といってもいいかもしれない。
前作「鏡の中のアクトレス」はざっくりいうなれば「N.Y.在住の日本人が、カリブ方面にリゾートに行きましたよ」的なアルバムだったわけだけれども、 今作は、それをこの二年の間に実際に味わって、もう1度同じようなアルバムを作ってしまった、というかそんな感じ。 前作はあくまで、日本から見たフィクションの"カリブ"であったり"N.Y"だったわけだけれども、 今作の彼女は実際にそこに暮らして、生活者としての視点を持ってしまった、そこが大きな違い。
よって、ニューヨークでの生活は彼女の作品にナチュラルな余裕と豪華さを与えた―――なんていい方をしてもいいんだろうけれど、「鏡の中のアクトレス」のような作品を待っていた私としては、妙に本格的になって面白味が減ったかな、と思ったりもする。 「ナッソーの月」のようなちょっとチープでコケティッシュな作品が彼女の1番いいところだとわたしは思うけれどもな。 彼女は、変に腰を重くしてないでもっともっとはっちゃけるべきでしょ、と。 全体に漂うブラコン臭も「ここまで行くと杏里じゃん」なんてわたしは思ってしまう。
N.Y.やマイアミでの穏やかな生活が垣間見える「34F-雨のSunday noon」「Daybreak in N.Y.」「Private Beach」「アリーシャ」あたりがこのアルバムのキモなんだろうが、今聴くと、いやぁバブルですねぇ、という感じでこれまた……。 ともあれ、こんなラグジャリーな私生活、ブルジョアでないうちらには、絵空事ですぅ。