生まれた時から転校生だった―― 熊本県出身埼玉県在住、水本夏絵によるソロ・プロジェクト。「わたしの音楽がひつじなら、わたし自身はオオカミだ」
生まれた時から転校生だった、と彼女は言った。教室のざわめきを遠くに聞きながら、カーテンの揺れる窓の向こう、校庭をぼんやり眺めて。
「普通の未来」は最初からあきらめていた。小さな部屋でゲームとネットとアニメだけを友達に、息を潜めて暮らしていた女の子。学校にも行かず、アルバイトも続かず、膝を抱えながら、でも彼女はひそかに歌を歌っていた。歌うことで初めて世界と繋がれた。
ある日、彼女は夜行バスに乗った。キーボードとPSPだけを持って――
今にも壊れてしまいそうなギリギリのバランスで、水本夏絵は歌っている。かなしみもさみしさも怒りも、そしてほんのちょっとだけある希望も、全部そのままにつめこんで。透明で嘘がない彼女の歌は、きっと他の誰かにとっても自分の歌になるだろう。これが転校生のファースト・アルバム。
【コメント】
“転校生”でありつづける、という茨の道を歩む水本さん。
ソフトだけどヘヴィな、ダークだけどスウィートな音楽だと感じました。― 堀込高樹(キリンジ)
切実で内省的な言葉たち。なのに彼女が歌うと親しみやすく響いてくる。なんでだろう!?― 堀込泰行(キリンジ)
どろどろの現実にしか紡げないキラキラの魔法がある。
優等生でも不良でもない女の子にしか辿りつけない場所がある。ひとりぼっちの君に世界は耳を傾けてる。― 夢眠ねむ(でんぱ組.inc)
東京シティ、気に入りました。いい曲。何故だかわかりませんが東京メトロのテーマソングとかにピッタリなのでは、と思いました。曲にキラキラが詰まって見えました。 東京へ おこしやす― 西浦謙助(相対性理論、誰でもエスパー、SKAFUNK、進行方向別通行区分、etc.)
おちこんだり、うきうきしたり、繊細な歌声から些細な感情が染み出している。そんな歌声をたよりに彼女のちいさな世界をのぞいてぼんやりしてみる。― tomad(Maltine Records)
転校生。彼女はどんな景色を見て育ったのだろう。どこから来たのだろう。そしてどこへ行くのだろう。軽やかなポップミュージック、スロウなバラードにのせて彼女はうたう。きみとぼくのセカイへの愛をうたう。自分の見た世界を俯瞰しつつも地に足の着いていない感覚。そんな視点から世界を覗いてみよう。あなたは違った景色を見る事だろう。あるいは、体に馴染むように受け入れられる見慣れた景色かもしれない。― 芳川よしの(telescope)
真っ直ぐで透明なナイフのようなまなざし
遠くからやってきた転校生は、なかなか笑ってくれないけれど
ほんとうのことだけ話してくれる
すぐ隣にいても彼女の叫び声が聞こえない人もいるかも知れないけれど
私には遠くからでも彼女のつぶやき声が聞こえる― Eily(ネバアランド)
儚げで今にも消えてしまいそうなのに、気づくとその刃に切られている。転校生の音楽には、静かで底知れぬ衝動を感じる。
美しい楽曲と、絶望をあかるく歌い上げる水本夏絵の声。そしてその言葉!ざわざわとした鳥肌が心地よく、病みつきになる。― Jammy(ネバアランド)