地球人類が消滅してから、ずっとずっと、後の世界。
地表のほぼ全ては氷に包まれ、地球上で栄えた生命の、その大部分は、既に姿を消していた。
生き残ったのは、ほんのわずかな微生物たちだけ。
そんな世界を一人眺める者がいた。
神のような、そうではないような、超常の者。
彼は凍り付いた世界に、一つの自我を発生させることとした。
それは人間の少女であった。
彼女は自分を作った超常の者の存在など、知りはしない。
目が覚めたとき、彼女にとって理解できたのは、
ただただ広く白い氷の土地に、一人でぽつりと存在していたことだけ。
彼女は自分が何者かも分からぬまま、けれど何かを求めるように、ゆっくりと氷の大地を歩きだす。
超常の者は、唯一の観測者として、その少女を眺め続けるのであった。