レゲエと電子音を巧みに採り入れたジャーマンロックへの傾倒ぶりが顕著なベルリン録音2nd
ニューウェーブの初期衝動を惜しげもなく披露した1stアルバム「NORMAL」で80年に颯爽とデビューした一風堂は、同年早くも2ndアルバムをリリースします。2ndアルバムである本作では思い切って海外録音を敢行しますが、アメリカでもイギリスでもなくドイツベルリンでの録音というところにニューウェーブな精神を感じさせます。不思議なことにベルリン録音の空気感は一風堂の音楽性にストレートに反映されており、スパンの短いリリース間隔とは思えないほど前作とは感触の異なるサウンドに仕上がっています。多用される金属的なシンセ音色、ボコーダーを始めとした声の電子的処理、開放的なインストはあるもののどこか陰りのあるメロディが目立つ楽曲といい、明らかにジャーマンロックへの傾倒ぶりが目立つ作品であると言えます。
「ジャーマン・ロード」「HEIDELBURG SYMPHONY」のようなインストをレコード両面のオープニングに並べ、さらに組曲的な「NEU! 」といったジャーマンロックなどの大作を多く収録することで本作の方向性をアピールしていることからも、本作に対する気合いのほどはうかがえますが、その意欲が存分に発揮されているのが「ロンリー・パイロット」「ミステリアス・ナイト」「FUNK #9」といった金属的電子音が目立つニューウェーブ楽曲で、1st譲りのまだ甲高い頃の土屋ヴォーカルをさらに狂気にデフォルメした声処理と共にシンセサウンドもモジュレーション系の音色を駆使して存分に暴れ回っている印象があります。どうしても土屋の印象が強かった1stと比べると見岳章の顔が徐々に見えてきたといってよいでしょう。次作「Radio Fantasy」によって見岳の才能が開花し一風堂の個性的なサウンドが完成の域に達しますが、本作はその礎となるきっかけとなった重要な作品に位置づけられています。