すべてのロックンロール・ラヴァーズに捧げる、ミッシェル・ガン・エレファントの1年4ヶ月ぶりの新録音アルバム。今や国内にとどまらずUK、USAまで視野に入れた音作り。
ミッシェルのライヴで僕が何をしてるかって、言うまでもなく“うたって”いるのである。足はがに股、両手は後ろに組んで、ちょっと上向きに前方を睨みつけて。そう、リアム・ギャラガーである。ミッシェルとオアシスが“最強のうたうたい集団”として同一線上にいるというのは紛れもない定説だと思っていたのだが、それは久しく妄説として片隅に追いやられてきた。他にいくらでも盛り上がる曲があるのにあえて「キラー・ビーチ」をイベントでかけたりしたのも僕なりの主張だった。しかし、こんなにも素晴らしい“歌集”が世に出た以上、よけいなお節介は必要なしだろう。そもそもささくれだった演奏は、チバのうたを活かすための方便にすぎない。いや、今回はギターの音色やドラムの一発一発さえもがやけに優しげだ。でもセンチメンタルには流されない。張り手の強度は相変わらず。不敵度数は倍増。変化でも転機でもない、これこそがミッシェルだ。 (平野敬三) --- 2000年03月号