「再生」の2013年、the cabsが真のはじまりを打ち鳴らす
『一番はじめの出来事』、『回帰する呼吸』という2枚のmini albumを発表し、2012年9月に行われた「残響祭」ではSHIBUYA O-EASTのトップバッターを堂々務めるなど、着実な成長を遂げてきたthe cabs。前2作に比べて圧倒的にスケール感の増した1st full album『再生の風景』は、もはや「正統残響」というレーベル・カラーの枠を超え、the cabs以外の何者でもない個性を確立させた作品だと言えよう。
意表を突いたリズムの“Leland”で幕を開ける本作には、性急さの中に高いスキルが光る“花のように”をはじめ、いかにもthe cabsらしい曲がある一方で、これまでよりストレートに歌を聴かせようとする意識も感じられる。巧みな展開で聴く者を引き込むリード・トラックの“anschuluss”や、彼らとしては珍しくシンプルな演奏でまとめた“Your eyes have all the answer”での、表現力と艶の増した首藤の歌声は特に印象的だ。まるで組曲のような大作“すべて叫んだ”まで全10曲、間違いなくthe cabsの最高傑作である。
アルバム・タイトルに込められたメッセージ性の高まりも見逃せない。デビュー作で「僕たちに明日はない」と歌った彼らは、2011年という誰にとってもターニング・ポイントとなった年を経て、「再生の風景」へと一歩踏み出す決意を固めたのだ。その意味では、本作こそがthe cabsにとって真のはじまりとなる一枚だと言ってもいいのかもしれない。