<物語>
人が人を殺すことの意味なんてわからない。
だけど・・・・僕にもひとつだけ理解出来る事件があった。
集団自殺、だ。
ネットで知り合った見知らぬ他人と一緒に死ぬ。世間では理解されるはずのないその行為が、僕の心を揺るがす。なぜなら…僕も自殺志願者だから──
僕は一緒に自殺してくれる人をずっと探していた。
だけど、そんな人はいつまで経ってもあらわれやしない。
「やっぱしひとりで死ぬしかないか」
そう決心した僕は決行に向けあてもなく街をさまよい歩いた。
ふと、見知らぬ路地に迷いこんだ僕の目の前に小さな黒猫があらわれ、足元にまとわりついてくる。黒猫に誘われるように「ふしぎ工房」に迷いこんだ。
そこは老人がひとりで店番をしているがらんどうの倉庫のような店だった。
老人は何もかもわかっているような優しい口調で僕に「あなたの願いを書きなさい」と注文書を差し出した。
僕は震える手で「一緒に死んでくれる人を紹介して下さい」と書き、ふしぎ工房を後にした。
彼はいた──店の前で注文書の控えらしき紙を持ち僕を待っていた。
生まれて初めて、理解しあえる友達を見つけた僕と彼の望みはかなうのだろうか…?