静音と轟音が織りなす様式美、インストポストロックの原点回帰を感じさせる秀作。
本作は、首都圏のアンダーグラウンドシーンで活動してきているインストポストロックバンドMYY.の1stフルアルバムになります。全5曲ですが、各曲とも13分前後の長尺曲で、トータル1時間越えの渾身の作品。
清廉な響きをたたえた静音パートと、そこに畳み込まれるように展開されていく轟音パート、その両者の交錯によって形作られていく黎明期のポストロックが湛えていた様式美、またそれが促す内省的な世界観といったものにこだわり抜いてつくられている楽曲構造と音響構築は、時代を超えて訴えかけるものがあるのではないか。そう思わせるに十分すぎる作品に仕上がっている。
最初期のMONOをはじめ、Caspian、Explosions in the sky、またそれに先行するポストハードコアからポストロックへの移行期の音たちがもっていたシンプルな楽器編成や機材使用でつくりだされていた音の広がりと奥行き、パンク・グランジ以来保持されてきていたエモーショナルな高揚感やドライブ感をこよなく大切にし、ギター2本とドラムというベースレスのミニマムな編成で、PC同期は一切行わず、敢えて外連味のないサウンドで勝負しようとしている。